【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

ぶんぶんと冷気の中で頭を振る。

忘れたい過去を私が覚えててどうするの。


冷たい白の中にいると心が洗われるようで気持ちが良い。

目をつぶって深呼吸する。

少し鼻が痛い。


「露李、何してんだー?」


頭上から声が聞こえた。


「あ…結先輩」


「何だ気づいてなかったのかよ」


くるくると辺りを見回すと、結が太い木の枝に座ってこちらを見つめていた。


「何してるんですか、そんなとこで」
 

「起きたら雪降ってたからな、見てた。こう、何だ?いつもと違う景色っつーの?」


ああ、先輩小柄だから。

そう一人で納得すると、結がグッと眉間に皺を寄せる。


「…今、失礼なこと考えただろ」


「え!考えてませんよー!」


「丸分かりだからな、この結様を舐めんなよ」


「だから考えてませんって!」


たぶん、と心の中で付け加えた刹那、結がトンッと枝の上で跳ねた。


「わ!?何してんですか先輩!!」


「うるせーな。そんなヤワじゃねーっての」


軽い音を立てて地面に着地する。


「ほら、こっち来い」

言われるがままに傍へ寄ると、膝の裏と背中に手を回された。


「え、先輩──」


続きが言えなかったのは、とてつもない浮遊感と。

頼もしい腕の温かさと──その距離に気をとられていたから。

顔の近さに頭が真っ白になった。


すぐにまたトンと振動があり、硬いゴツゴツした何かの上に座らされる。


それがどこだか理解するのに時間はかからず。


「結先輩、高い高い高い!!」


「知ってる。木の上だからな」


「じゃなくてっ、」


バランスが。

パニックでバランスがとれない。


「あー分かった!動くな!」


横からキュッと肩を抱かれる。

頭が結にもたれさせられているのが感触で分かった。


「これで大丈夫だろ?」


ドキドキと心臓が早鐘を打つ。


「大丈夫、です」


やっぱり近い。

高さより、心臓が大丈夫じゃなかった。


「気持ち良いだろー?高い所にいるとさ、解放感がすげーよな」


「そ、そうですね」


結がニカッと笑う。


「そういやお前、今日は気を仕舞ってんのか?」


「はい。分かります?」


「おう。昨日まで金とか銀とかの光がお前の周り飛んでたからな。それにさっき気づかなかったみてーだし」


結は無鉄砲に見えて一番周りを見ている。