翌日、3時間目の授業が終わると担任の矢野先生が教室に入ってきた。

先生が黒板に「自習」と書くと途端に教室がさわがしくなる。


「お前ら、自習は休み時間とは違うからな。
とりあえず絶対に教室から出るなよ」


それだけ伝えると先生はさっさと職員室にもどっていった。



「ねえねえ、りり花、早弁しちゃおうよ♪

教室から出なければなにしてもいいって
言ってたよね?」


「賛成!!お腹空いたよね♪」


お弁当を取り出して、窓際の沙耶ちゃんの席の前にすわる。


すると、沙耶ちゃんが校庭で体育をしている1年生を見て眉を寄せた。



「ねえ、りり花。あの1年、どうして玲音くんのジャージ着てるの?」


「え?」


沙耶ちゃんに言われて校庭に視線を向けると、

だぶだぶの大きなジャージを着て走っている女の子が見えた。


「あれ玲音のジャージなの?」


「うん、さっきすれ違ったら胸に如月って刺繍がされてたんだよね。

明らかにサイズ大きいし、肩にラインが入ってるのは男子のジャージでしょ。

この学校で、如月って名字は玲音くんだけだし。なにがあったの?」



「さあ?」



玲音、なにも言ってなかったな…



玲音のジャージを着て幸せそうにしている女の子をぼんやりとみながら

卵焼きをぱくりと食べた。