続・祈りのいらない世界で

「…そんな顔で泣くな。俺は別にキヨだから付き合わないって言ってんじゃない。俺は誰とも付き合わないだけだ」


「…なんで?」


「キヨのそばにいられれば満足なんだよ。だから他は何も望まない」



イノリはキヨの涙を指で優しく拭うと、微笑んだ。




狡い。イノリは狡い。
こんなに辛いのに諦めさせてくれない。



どうすればいい?

諦めるなんて絶対無理だよ。




イノリがいない世界に私の居場所はない。

イノリ以外の誰かを好きになれるワケがない。



だってこんなに泣きたくなる程
イノリが大好きだから…。





「…っ…イノリ。八つ当たりしてごめんね。…私、早く大人になりたい…こんな性格やだ…」


「大人なキヨなんか気持ちわりぃよ」


「何それ!失礼ね!!」


「…変わらないでくれ。キヨはいくつになっても泣き虫で甘ったれな今のキヨでいろ。じゃなきゃ嫌だ」




あぁ…

やっぱり私はイノリには適わないんだな。





キヨは涙を拭くと、精一杯の笑みをイノリに向けた。





「…帰るか。それともカゼ達はまだ飯食ってるだろうし、俺らもカゼ達んとこ戻るか?」

「…ううん。今はイノリと2人でいたい」



キヨはイノリに寄り添い俯いた。





私の彼氏になる事はないイノリだから、いつか必ず私から離れていく。


だったら一緒にいられる今、出来るだけ長い時間一緒にいたい。



独り占めが許される今だけは…。




「よし、じゃあどっか行くか。キヨ、腹減ってねぇか?」

「…大丈夫。それより水族館行きたい」

「は!?今から行けるかよ!!」

「池袋にあるじゃん!行こっ」



キヨとイノリは電車に乗り、池袋に向かうと水族館へと向かった。



水族館が入っているビルに着いた2人が中に入ると、閉館時間が18時30分とのことで、2人は急いで見て回った。