続・祈りのいらない世界で

「でもイノリ…どんな女より可愛いって言ってくれた。私よりいい女なんかいないって言ってくれた…。
あれもその場しのぎの言葉だったのかな?ただ口から出ただけで、イノリの本心じゃない…」




…悲しい。


こんなに好きなのに
物心ついてからイノリだけを思い続けているのに


未来のないイノリを愛するこの気持ちが悲しい。




どうしたら振り向いてくれるの?
諦めなきゃいけないの?





キヨは賑わう駅前で1人、流れ落ちてくる涙を拭っていた。




「キヨっ!!!!」



名前を呼ばれたキヨが振り向くと後ろにはイノリが立っていた。




「お前、1人でいる時に泣くなよ。また変な男に引っ掛かったりでもしたらどうすんだよ」


「だから優しくしないでって言ったでしょ!?イノリは私の彼氏じゃないんだから、私なんかほっとけばいい!!構わないで!!」



キヨがイノリを睨み付けると、イノリは悲しそうに眉を寄せた。




「…お前はどうしたいんだよ。俺にどうして欲しいんだよ。…彼氏になれば満足なのか?俺なんか彼氏にしたって…幸せになんかなれねぇぞ」



イノリの言葉にキヨは口をつぐんだ。




そんな投げやりな態度で、機嫌を直す為に仕方なく彼氏になって欲しいとは思わないから…