続・祈りのいらない世界で

「…いつの間に…女になったんだよ」


「へ?何?」


「あんなにちっころくて危なっかしくて、人見知りなんかしねぇからちょこちょこと誰かについて行って、すぐ泣いて…。

お前の世界には俺しかいないと思っていたのに。…いつの間にか大きくなってたんだな、お前も俺も……カゼ達も。まぁお前は小さい頃から大して変わってねぇけど」


「イノリ?何、お父さんみたいな事言ってるのよ」



確かに性格は変わらない5人だが、見た目や体つきは変わった。


小さい頃は男も女も区別がつかない体をしていたが、いつの間にかイノリ、カゼ、ケンは男の子から男性になり、キヨとカンナは女の子から女性になった。



当たり前の事だけど、少し切なく感じる。





「イノリ。私は…私の世界の王子様は物心ついた頃から…」

「プール楽しみだな。お前溺れないようにちゃんと浮き輪持ってけよ」



イノリはキヨの言葉を遮って話すと、部屋から出て行った。



キヨの言葉を聞いてしまったら、自分の気持ちを言わずにはいられなくなるから…



「…イノリのバカ。」




私の世界の王子様はイノリしかありえない。


でも今の私は、毒リンゴを食べ眠ったまま中々来てくれない王子様を待ち続けているだけの白雪姫。

それか硝子の靴を王子様に拾って貰えなかったシンデレラ。



私は空回りしてばかりの夢を見て、1人舞い上がっているだけの虚しい女。



イノリという王子様みたいに物腰は柔らかくないし、紳士的でもないナイトをずっと待っているのに…




キヨは虚しさを噛み締めると、着替える為にイノリの部屋から出て行った。