続・祈りのいらない世界で

「…何もいらねぇから…ここにいろ。……いなくならないで…キヨ…」



珍しく素直なイノリに赤くなりながらも、キヨはイノリを可愛いと思った。




「…私以外の女の子にもこうやって甘えるの?こんな可愛いイノリを見せるの?」

「…キヨにしか…甘えねぇよ」

「え?」

「俺はガキの頃からっ…キヨにしか…弱い所見せてねぇよ。…お前もわかってるだろ…」



イノリは息を切らしながら言葉を紡ぐ。

キヨは嬉しくて泣きたくなった。




「…あ?何で泣いてんだよ。…誰に泣かされた。俺がぶっ飛ばしてやる…」

「イノリだよっ」

「あぁ…そうか…」



イノリは息をあげながら微笑むとキヨの額にキスをした。

いつもと比べて唇が熱い。




「イノリ、ベッド行こう?ちゃんと寝なきゃ」

「…ずっとここにいるか?」

「うん、いるよ」

「じゃあ…寝る」



イノリが頷くとキヨはイノリと共にベッドに向かい、イノリをベッドに寝かせた。


黒い癖っ毛が汗でイノリに貼り付いている。




「キヨ…」

「ん?何?ダルい?」

「…隣りで寝ろ」

「はぁ!?私が寝たら狭いでしょ?いいから大人しく寝なさい」



キヨが拒否るとイノリはキヨに背を向け、毛布の中に潜った。


拗ねているような、いじけているようなイノリの仕草にキヨは笑った。




子どもの頃から強がってて、大人で、決して子どもっぽい姿を見せないイノリ。



高熱のせいか弱くて可愛いイノリの一面を知れたキヨは、顔が緩みっぱなしだった。