続・祈りのいらない世界で

「イノリが風邪引くなんて珍しいわね」


「私はしょっちゅう引くのに、4人は全然引かないもんね。私が移しちゃう事があるけど。イノリとカゼは体鍛えてるからで、カンナは予防をちゃんとしてるからかな?ケンは何とかは風邪引かないってヤツだね」


「酷いよ、キヨ〜」



キヨはケンにニカッと笑うと、イノリの部屋へと向かった。



部屋に入るとイノリは床の上に寝そべっていた。

どうやらベッドに辿り着く前に力尽きたらしい。




「ちょっと、大丈夫?ちゃんとベッドで寝なきゃ。ほら」

「う〜ん…マジ死ねる…」

「風邪くらいじゃ死なないわよ。でもイノリ、あまり風邪引かないから辛いよね」



キヨはイノリに肩を貸すと、イノリを引き吊りながらベッドに運ぶ。




「体温計らなきゃ。はい、脇に挟んで」

「…無理。キヨ計って…」

「もー、仕方ないなぁ。私は祭ちゃんじゃないのよ?」



キヨはイノリの上に跨るとイノリの脇に体温計を挟み、額に冷却シートを貼った。



「38.5℃か。高いね。薬飲まなきゃ下がらないかな。でも薬飲むなら何か食べないと胃荒れちゃうし…。イノリ、お粥なら食べれる?」

「何もいらねぇ…」

「でも食べないと良くならないよ?私、お粥作ってくるね」



キヨがベッドから降り部屋から出て行こうとすると、イノリはフラフラと立ち上がり後ろからキヨを抱きしめた。




「…どこ行く?俺を…置いていくのか?」

「は?台所行くだけだよ。イノリに美月スペシャルお粥作ってあげようと思って♪」

「いらねぇ…」

「私の作ったご飯が食えないとでも言いたいの!?失礼ねっ」




キヨがキッとイノリを睨むと、イノリの瞳は熱のせいか潤んでいて寂しそうだった。