続・祈りのいらない世界で

自分がもし漫画でいう主人公なら、何があっても必ず最後は幸せな結末を迎える。


でも視点を変えて、違う人が主人公の話だったなら、自分はあっけなく散る役になってしまう。


人はみんな自分を主人公として、それぞれの物語の中を生きている。



でも現実は、誰かが作った話のように感動的には出来ていない。



キヨは長年イノリを愛する事で、届かない恋の虚しさを覚えてしまっていた。




「キヨ、あなたは大丈夫よ。キヨの世界もイノリの世界もヒロインはキヨだけ。他の人なんか入れやしないわ」


「ありがとう、カンナ。私はイノリのヒロインじゃなくてもいいんだ。脇役でもイノリの世界に登場出来るなら、私は満足だよ。もうそれ以上は何も望まない」




キヨはカンナの手を引くとイノリ達の元へ戻った。



その後、いつものように車に乗って帰宅した5人はすぐにお風呂に入り、リビングでくつろいでいた。




「はっくしょんっ!!」

「…イノリ?風邪引いた?」

「あー…そうかもな。寒気するし…」



ぐったりとソファに座るイノリの額を触るキヨ。

イノリの額は凄く熱い。




「イノリ、部屋行こう?体温計と冷却シート持っていってあげるから」

「ん…」



イノリは素直に頷くと、ダルそうに部屋へと向かった。