続・祈りのいらない世界で

イノリの肩に頭を乗せているキヨの鼻に、さわさわとカゼの髪が掠ると、キヨはクシャミをした。




「………キヨ。寒い?」

「ううん、カゼの髪がくすぐったかっただけ」

「………あぁ。丁度キヨの鼻に頭が当たっちゃうんだね。ごめんな」



カゼは体を起こすと、キヨの頭に頭をつけ眠った。




「だからそんなにくっつくな!男同士が寄り添ってんのなんて気持ちわりぃだろーが!!」

「………俺もイノリに甘えたくなったんだよ」

「お断りだ!!早く離れろ!!」



イノリの言葉を聞かずにカゼはそのまま眠った。





吹き渡る風。
その風は草や花、5人の髪を揺らす。



陽が昇り、薄明るくなった空から星が消えた時…


土手の草むらでは


イノリの肩に顔を乗せたキヨが
そのキヨの頭の上でカゼが
カゼの肩に顔をくっつけたカンナ
そしてカンナに寄りかかってケンが眠っていた。




物心ついてから大学生になった今日まで、何も変わらないこの風景。




土手や河原、星がここにあって

草の匂いや風の吹く音が聞こえて


大切な存在がそばにいるこの世界は、これからどんどん大人になっても変わらないんだと信じたかった。



時が流れ、周りが変わっても私達は変わらないんだと思いたかった。




でもそれは
叶わなかった…