続・祈りのいらない世界で

「おはよ、イノリ。やっと起きたね」

「ケンがうっせぇから目覚めた」



イノリは頭を掻くと、携帯を取り出し時間を確認した。




「…4時か。そろそろ夜が明けるな」

「講義が午後からでよかったよね。試験前だから休むワケにもいかないし」



イノリとケンが話していると、キヨがポフっとイノリの肩にもたれた。




「あ?…寝たのか」



イノリはキヨをソッと草むらに寝かすとキヨは唸りながら起き上がり、イノリの足の間に座った。




「何だよ、寝っ転がった方が寝やすいだろ」

「イノリとくっついてなきゃやなの…」



素直過ぎるキヨの発言に赤くなりながら、イノリは優しく微笑んだ。




「仕方ねぇな。ほら」



イノリはキヨの脇を掴み自分に向かい合わせると、キヨの頭を自分の肩に引き寄せた。




キヨはこの時本当は、眠たくも寝たくもなかった。


ただイノリに触れていたくて、寝たふりをしていただけだった。




ごめんね、イノリ。

嘘つきで狡賢くて、計算高くて…


バカな私は、こうでもしなきゃあなたを引き留められない。




女として見られなくてもいい。

私が甘ったれだから面倒を見てやらないとと、イノリが思ってくれるのなら私はいくらでもバカになるよ。





「イノリはキヨが寝てないと素直になれないのね」

「ぎゃあー!バカイノリ!!そんなにキヨにくっつくなー!!」

「………ケン、うるさい」



ケンの騒ぐ声で目を覚ましたカゼは、キヨを抱っこしながらウトウトするイノリに寄りかかった。




「あ?何だよ!!気持ちわりぃからくっつくな!!俺は女じゃねぇぞ」


「………イノリは体が大きいから寄りかかりやすいね。包容力がある。キヨが甘えたくなる気持ちがわかるな」


「人を柱代わりにすんな!!暑苦しいんだよ」


「………気にしない気にしない」




そう言って寝始めたカゼに溜め息をつくイノリ。