続・祈りのいらない世界で

「カゼ?どうしたのよ、いきなり。地元に行きたいなんて」


「………キヨの願いを叶えられる星は、土手から見える星だけだからね」


「キヨ?星?」


「………うん。プラネタリウム見てる時のキヨが寂しそうだったから」



カゼの言っている意味がわからないカンナは首を傾げる。




「ねぇ、カゼはキヨの事が好きなの?カゼは何よりもキヨを大切にしてる。見方を変えればイノリ以上に…」


「………イノリ以上にキヨを大切にするのは無理だよ。イノリに適うわけがない。キヨは危なっかしいから守ってあげたくなる。見てると癒やされるから好きだよ。
でもそれはカンナと同じ気持ち。恋愛感情はないよ」




カゼがキヨを恋愛対象として見ていない事に安心したカンナだが、自分もそういった対象に見て貰えていない事を改めて知ってしまった。



泣きたくなる気持ちを堪えて、カンナは話を続けた。




「…キヨの願いを叶えられるのは星じゃないわよ、カゼ」

「………何?」

「イノリよ。キヨが望むもの全てを叶えられるのはこの世にイノリしかいないわ」



カンナの言葉を聞いたカゼはルームミラー越しに、寄り添って眠るイノリとキヨを見た。




「………うん。大丈夫だよ、キヨ。必ず叶うから」




2人に優しく微笑んだカゼは運転に集中した。


深夜の高速道路は車が走っておらず、静かだった。




「ん〜…重いっ…」



目を覚ましたキヨは、キヨの頭に寄りかかって眠っているケンを窓に押し付けると、イノリに寄り添った。




「キヨ起きたのね。おはよう」

「おはよカンナ。今どこ?」

「もう高速降りたから、あと10分くらいで着くわよ。ケンとイノリ起こしてくれる?」

「はーい」




キヨは小さくいびきを掻きながら眠るケンを揺すった。