続・祈りのいらない世界で

その頃、キヨとカゼはホールの入口の椅子に座って話していた。



「埼玉も都会だねぇ。ダサイタマとか言われてるけど、結構拓けてるじゃんね」

「………うん。拓けてる割に東京に比べてそんなに人多くないし、住みやすそう」



2人は大きな窓の外を見つめていた。

ホールからは大歓声と爆音が響いている。




「ねぇカゼ。カゼは東京に来てよかったと思ってる?」



キヨの言葉にカゼは頷く。




「………キヨは思わない?」


「ううん。便利だし賑やかだし、楽しいから来てよかったと思ってるよ。…ただ、ちょぴっと恐いだけ」


「………恐い?確かに最近は物騒だからね」


「そうじゃなくて、東京という都会の雰囲気が私達を引き離してしまいそうで恐いの。…よく憧れていた東京は冷たくて、人を変えてしまうとか言うじゃない?だから余計…」



そう言って寂しそうに遠くを見つめるキヨに、カゼは優しく微笑んだ。




「………大丈夫。俺らは離れたくないから一緒に東京に来た。だから何があっても離れたりしないよ」


「ありがとう。…カゼの言葉はいつも私を救ってくれるんだよ。だからカゼは絶対にいなくならないでね?」


「………うん。その心配はいらない」




カゼはそう言うとキヨの手を握り、会場から出た。