続・祈りのいらない世界で

「キヨ!大丈夫!?」

「カン…ナ?ケンも。こんな所で何してるの?」

「何してるのって…キヨ、あなたはお母さんになったのよ。覚えてる?」

「あ…そうだった」



キヨは薄く微笑むとハッと何かに気付き、体を起こした。




「まだ起きちゃダメよ!4日も眠ってたくらい体が弱ってるんだから安静にしてないと」


「カンナ…イノリは?イノリは何処?」


「イノリなら屋上にいると思うけど…。私が呼んでくるからキヨは横になってなさい」


「…ううん。私が呼びに行く。イノリはきっと今…」


「今、何?」



カンナが問い掛けると、キヨは首を横に振りながら点滴を外した。





「キヨ!お願いだから安静にしててよ!!またキヨが…目を覚まさなくなったら…」



震えながらキヨの腕を掴むカンナの手に手を添えると、キヨはカンナを見つめた。




「大丈夫だよ。ありがとう、カンナ。でもね、カゼと約束したんだ」


「カゼ…?」


「うん。…夢の中の話だけど」



キヨはスリッパを履くと、手ぐしで髪を整えながら病室から出て行った。




4日も寝ていたからなのか、まだ体が弱っているのか分からないけど、階段を上るだけで息が切れ、足が震える。



でも、イノリの元に行きたい気持ちがキヨの背中を押していた。




「…お腹がヘコんだ分、体軽くなったはずなんだけどな」



キヨは壁に寄りかかりながら階段を上る。