続・祈りのいらない世界で

「カゼは…愛した人だもの。どんな時も見つめてたんだから似るわよ、そりゃ」


「愛した人?愛してる人だろ?」


「カゼへの気持ちはカゼがいなくなった日から過去形になったの。どんなに綺麗事を並べたって、過去の気持ちは進行形の気持ちには勝てないのよ」




死んでしまった人を永遠に愛し続けるなんて無理なこと。



『心の中で生きてる』

『見えないだけでそばにいる』

『ずっと愛し続ける』



口先では
どんな語択を並べられても


生きている自分の心は

過去よりも未来を選ぶ。





だってもう、今以上愛しようがない人と

これからもたくさん愛せる人だったら


愛せる人を愛したいって思うから…。





カゼを忘れたワケじゃない。

カゼを愛した記憶がなくなったワケでもない。



ただ、新しい感情を抱いただけ。






それは寂しくて悲しい感情だけど

生きる力になる。





「私は今でもカゼを愛してる。でもカゼが生きていた時に愛していた気持ちから増えたりしない。だってもうカゼがいないんだもの、今以上愛せないわ」


「…カンナ」


「ケンが私なんかに見向きもしないって事ぐらい分かってる。だけど私は…ケンが好きよ」



カンナがケンを見入ると、ケンは眉間に皺を寄せた。










“………キヨ”




「誰?」




“………カゼ”




「カゼ?」




“………目が覚めたら1番にイノリを抱きしめてあげて”







「…ん…」



キヨが薄く目を開くと見慣れない天井が映った。



「あれ?私…」



キヨが目だけを横に動かすと、目を見開いたカンナとケンがこちらを見つめていた。