「キヨ、まだ起きないね」

「命に別状はないみたいだけど…。きっと約1日も頑張ったから、疲れちゃったのね」



イノリとキヨの長男・陽生が誕生した翌日。


点滴を打たれ、病室のベッドに眠るキヨを眺めているケンとカンナ。



意識を失ってから1日が経とうとしても、キヨは目を覚まさない。




「ところでイノリは?新生児室?」

「…屋上じゃないかしら」

「屋上?」




その頃。

夜空が広がる屋上にいるイノリは1人で空を見上げていた。


そろそろ面会時間も終わる。




「イノリ!こんな所で何してんだよ。キヨのそばにいてやれよ」

「………」



屋上にやってきたケンがイノリに声を掛けるが、イノリは無言のまま。




「お前がそんなんでどうすんだよ。キヨは命に別状があるワケじゃないんだよ?…ヨウセイのとこにも行かないなんて…」


「…俺は…現実が恐いのかもしれない」




カゼがいきなりいなくなったように、キヨもいきなり消えてしまう気がして

動かないキヨを見れないイノリ。




ケンはそんなイノリの心情を察した。