続・祈りのいらない世界で

「3200gの元気な男の子ですよ」



へその緒が切られ体を洗われた赤子を助産婦はキヨに抱かせた。


真っ赤な顔のお猿さんみたいな赤ん坊。

ずっとずっと会いたかった我が子。



10ヶ月待ち望んだ存在が今、目の前で元気よく泣いている。




「…陽ちゃん。頑張ってくれて…ありがとう」



掠れた声で我が子にそう呟いたキヨは、ずっと手を握ってくれているイノリを見つめた。




「…ふふっ。イノリの…泣き虫さん…」


「うるせぇな!…でも…お前が痛みから解放されてよかった…」


「いつまで経っても…優しいね。…イノリは」




イノリはキヨから息子を受け取ると、不思議なものでも見るかのように息子を見つめた。




「あはは…。陽ちゃんは…イノリに…似てる」

「まだ分かんねぇだろ。猿にしか見えねぇよ」

「イノリみたいに…泣いてるから…だよ」



キヨは目を真っ赤にして涙を流しながら息子を抱いているイノリに微笑むと、イノリに手を伸ばした。




「…イノリ…。私も構って」

「ふっ。美月は甘ったれだな」



イノリは差し伸べられているキヨの手を握ると、優しく手の甲にキスをした。




「…俺やっぱり、お前のこと好きだわ」

「やっぱりって…何?」



不満そうなキヨに笑うイノリ。




愛する旦那の笑顔と我が子の泣き声にキヨが幸せに包まれていると


キヨは意識が遠のいていくのを感じた。