「…イノリがいると安心する。……だから…イノリは笑ってて。『この泣き虫』って…笑ってて」
イノリが不安そうだと私も不安になる。
イノリが悲しそうな顔をしていると私も悲しくなる。
イノリは普段のままでいて欲しい。
いつものように憎まれ口を叩いて
いつものように笑って…
「…泣き虫」
「ふふっ。寝癖」
優しく微笑むキヨの汗を拭いながらイノリも微笑んでいた。
それから更に5時間が過ぎた頃。
少し子宮口が開いたキヨは分娩室に運ばれた。
その時、キヨの入院に必要なものを持って病院へ駆け込んできたケンとカンナとフウは、浅く息をするキヨに声を掛ける。
「キヨ、もうすぐよ。もうすぐでイノリにそっくりな赤ちゃんに会えるからね」
「あのね、キヨ。母ちゃんが『いきむ時は今までにないような大きな便を出すつもりでふんばるといい』って言ってたよ!」
「ケン!赤ちゃんと便を一緒にしないでよ!!」
ケンをど突くカンナ。
ケンとカンナを見たキヨは、何故だかホッとした。
「……あーちゃん、待ってうよ(赤ちゃん、待ってるよ)」
カンナに抱かれているフウは、担架に乗っているキヨに両手を伸ばす。
キヨはフウの小さな手を指先で握ると、ゆっくり上下に振った。
「みんな、あ…(りがとう)」
「キヨ?声出ないの?」
口を動かすだけのキヨを見てカンナが呟く。
イノリが不安そうだと私も不安になる。
イノリが悲しそうな顔をしていると私も悲しくなる。
イノリは普段のままでいて欲しい。
いつものように憎まれ口を叩いて
いつものように笑って…
「…泣き虫」
「ふふっ。寝癖」
優しく微笑むキヨの汗を拭いながらイノリも微笑んでいた。
それから更に5時間が過ぎた頃。
少し子宮口が開いたキヨは分娩室に運ばれた。
その時、キヨの入院に必要なものを持って病院へ駆け込んできたケンとカンナとフウは、浅く息をするキヨに声を掛ける。
「キヨ、もうすぐよ。もうすぐでイノリにそっくりな赤ちゃんに会えるからね」
「あのね、キヨ。母ちゃんが『いきむ時は今までにないような大きな便を出すつもりでふんばるといい』って言ってたよ!」
「ケン!赤ちゃんと便を一緒にしないでよ!!」
ケンをど突くカンナ。
ケンとカンナを見たキヨは、何故だかホッとした。
「……あーちゃん、待ってうよ(赤ちゃん、待ってるよ)」
カンナに抱かれているフウは、担架に乗っているキヨに両手を伸ばす。
キヨはフウの小さな手を指先で握ると、ゆっくり上下に振った。
「みんな、あ…(りがとう)」
「キヨ?声出ないの?」
口を動かすだけのキヨを見てカンナが呟く。