暫く抱きしめ合った後、イノリはキヨのお腹に耳を寄せた。


胎動を聴くのがイノリの日課になっていた。



「…ガキが動いてる音なのか美月の腹の音なのか分かんねぇ」

「ガキじゃなくて陽ちゃんって言ってよ!!イノリが命名したんでしょ」



キヨはイノリの髪をグイッと引っ張る。




「ねえ、陽ちゃんはどんな子になるかな?秀才かな、スポーツマンかな。どうしよう!有名になったら」



既に親バカ全開のキヨ。



「俺と美月のガキだ。極平凡な子どもに育つよ」


「ん―…それでもいっか。ただ、私みたいにイノリみたいな人と巡り会ってくれたらいいな」




勉強なんて出来なくてもいい

運動なんて出来なくてもいい



だけど


その人が嬉しいと自分も嬉しい
その人が悲しいと自分も悲しい


そう思える人と出会える人生を歩いて欲しい。




沢山の人に愛されて
沢山の人を愛せる子に育って欲しい。







あのね、陽ちゃん。


ママとパパはね、生まれてからずっと一緒にいたの。



まるで『&』で繋がってるみたいに。




嬉しいことも悲しいことも一緒に感じて大人になったんだよ。





ママとパパは

赤い糸なんかで結ばれていない
運命の人なんかじゃない


ただ、一緒にいたいと思った気持ちが同じだっただけ。



でもね、それが一番大切なんだと思う。