続・祈りのいらない世界で

暫くして母と共にリビングに入ってきたイノリにフウが駆け寄る。



「……ねぐしぇ。おかーりしゃい(おかえりなさい)」

「おー、フウ。いい子にしてたか?」



イノリがフウを高い高いしていると、イノリの母が笑い出した。




「あははは!!あんた、ふうちゃんに“寝癖”って呼ばれてるの?いやははは!!傑作っ!」

「…ふふふっ」



カゼの母まで笑い出す。




「あ゙ー!!うるせぇ!!美月、飯っ!!」

「私に当たらないでよ!!」



帰宅したケンも交えて、大勢で食卓を囲んだキヨ達。

久しぶりの賑やかな団欒。






その日の夜。

イノリの母とカゼの母に部屋を貸したキヨは、イノリの部屋で寝る準備をしていた。



「祭ちゃん達、予定日までいてくれるんだって。凄い助かっちゃう」

「…お袋はとっとと帰ればいいのに」

「もー…何だかんだ言って祭ちゃんのこと大好きなクセに」



キヨは微笑みながら毛布を被る。



「…まぁ、お袋に孫が生まれる瞬間を見せてやりたいとは思うかな」

「それ!祭ちゃんが聞いたら喜ぶよ!!」



キヨがカバッとベッドから飛び起きると、イノリはキヨキヨの髪を撫でた。




「俺はお前が心配で仕方ない。出産は簡単なものじゃない。お前は体強い方じゃねぇし。…万が一お前に何かあったら俺は…」


「大丈夫だよ。母強しって言うでしょ?…それに私、もし自分が死んでイノリが再婚とかしたらヤダもん。イノリは誰にもあげないんだから」



キヨはイノリにキュッと抱きつくと、ググッと力を込めて抱き締めた。