続・祈りのいらない世界で

キヨがカゼのベッドに伏せていると、開け放しているドアから夏の生ぬるい風が吹き込んできた。



東京にいるはずなのに、地元の土手にいる時吹く風の匂いがした。

星を見てる時に感じる風。



まるで隣にカゼがいるみたいに感じる。




「………キヨ」

「…え?」



カゼの声が聞こえた気がしたキヨがベッドから起き上がると、綺麗に整頓されている本棚から雑誌やノートが雪崩落ちた。



キヨは少し気味悪がりながら、落ちた雑誌を片付けようと本棚に歩み寄る。



雑誌やノートを本棚に戻していると、一冊のあるノートに気付いたキヨ。


そのノートは普通の大学ノートの右端の真ん中に穴が開けられ、小さな南京錠が掛けられていた。



「…?なんでこんな厳重にしまわれてるんだろう」



ノートが気になったキヨはカゼの机の引き出しを漁り、南京錠の鍵らしき物を見つけた。



鍵を開けると、ノートはカゼの綺麗な字で日記のような物が書かれていた。




「ふふっ。カゼ日記なんか付けてたんだ。そういえば小学生の時、夏休みの絵日記の宿題だけはちゃんとやってたもんね、カゼ」



キヨはパラパラとノートを捲る。

日記は上京してから付けたものらしい。




5人のこと、サークルのこと、美咲のことなど上京したカゼに起こった出来事が詳しく書き記されていた。