続・祈りのいらない世界で

「小さい頃さ、よくヒーローごっこしたよね。いつも私がお姫様でイノリがヒーローの役だった」


「あぁ。どう考えてもお姫様はカンナの方が合ってんのにな」


「イノリのヒロインはいつだって私であって欲しかったの!!」




まだ幼稚園や小学校低学年の頃。

公園や土手に行っては、テレビ番組のヒーローの真似をしたり、おままごとをして大人の真似をして遊んでいた5人。



その日もいつものように土手でヒーローごっこの役割分担をしていた。



「じゃあ俺が王子様で、カゼが国民A、カンナが国民Bでキヨがお姫様。イノリはこの世を滅ぼそうとする魔王ね」


「やだ!!私、イノリが王子様がいい!!」



ケンの役の分担に不満なキヨは首を振る。



「………じゃあケンが民に卑劣な酷い王子様で、キヨが捕らわれの姫。そんなキヨを助けにくるヒーローがイノリってことにしよう」


「さすがカゼ♪それに決定」


「えーっ!!俺が悪役なの?悪役はイノリの方が似合ってるよ」



文句を言うケンに気にする事なくヒーローごっこを始める4人。

ケンは嫌々ながら悪役を熱演する。




「俺と結婚するんだ、キヨ姫」

「嫌です!!誰かぁ〜」



国民A・B役のカゼとカンナが傍観する中、すっかり役にのめり込んでいるキヨとケン。

そこにヒーローが現れた。




「姫を離せ!!ケンという名のバカ王子」

「誰だ!?」



ヒーローことイノリは、マントに見せかけたお中元の包みであったビニール袋を風に靡かせながら土手にある岩場に乗っている。