続・祈りのいらない世界で

「イノリ?…そんなに溜まってるの?」

「いや…。美月が可愛いから我慢出来なくなっただけだ」



好きや愛してるより、可愛いと言われる方が嬉しいかも。


イノリが可愛いって言ってくれるだけで本当に誰よりも可愛くなれる気がするんだよ。



キヨは優しく体を触ってくれるイノリを見つめながらそう思った。




「…あぁ、ゴム俺の部屋か。取りに行くの面倒だな…」



イノリが頭を掻きながらベッドから降りようとすると、キヨはイノリの腕を引っ張った。




「美月?」


「…いらない。隔たりなんかいらない。…イノリが全部欲しいよ」


「でもっ…ガキ出来ちまうぞ?」


「イノリが欲しいなら私も欲しい。……でも私はカゼとの赤ちゃんを殺した…赤ちゃんを産む資格なんてないかな?」


「美月、お前が殺したんじゃない。流産しただけでお前は何も悪くない」


「違うの!!私がイノリの子どもしか産みたくないって願ったから死んじゃったんだよ。私が望んでカゼとエッチして、妊娠したのに…なのにイノリじゃないからって…」



キヨが零れ落ちてくる涙を拭いながら話すと、イノリは優しくキヨにキスをした。




「それ以上言わなくていい。可愛い事ばかり言うなよ。俺がおかしくなる」



その日2人に距離はなかった。



ゴムの隔たりも
気持ちも

触れなかった全てに触れた気がした。