続・祈りのいらない世界で

「…それより俺聞いたんだけど、倉木って大学4年の時に事故で亡くなったんだろ?いいのか?みんなに知らせなくて」



鈴木の言葉に返す言葉がないイノリ。



本当ならみんなにカゼの死を伝えて、みんなでカゼのお墓に線香をあげに行くべきなのかもしれない。


でも…。



「…知らない方がいい事実もある」

「そうだな。わざわざ祝いの席でみんなを悲しませる必要はないか。倉木は人気があるから、みんな泣き崩れちまうもんな。俺も黙っておくよ」

「…サンキュ」



貸し切った居酒屋で、6年ぶりに顔を揃えた同志たち。



6年という月日は、就職や結婚、妊娠、出産など離れた彼らを変えていく。

でも集まればまた、あの頃のように笑い合える。




幼なじみだから変わらないのだと思っていた絆は

こんな所でも変わっていないと感じられる。






懐かしい雰囲気の中、騒がしく過ぎていく時間。


同窓会はお開きとなり、二次会の場所へと移動する一同。



カンナとケンはクラスメイト達に挨拶すると、家へと帰っていった。



「川鳥くん帰っちゃったんだね。カラオケって言ったら川鳥くんって感じなのに」


「ケンは今は歌いたくないんだよ。だからソッとしててあげて」


「ふーん。残念だなぁ。…美月と北山くんは行くでしょ?」


「ううん。行きたかったけど、ちょっとイノリ酔ってるから連れて帰るよ」


「えーっ!!行かないの?倉木くんいないのに、北山くんまでいなくなったら華がなくなるじゃん!!」


「…その発言、他の男子に失礼だよ」


「本当の事だからいいのよ。そっかぁ〜…今度はいつまたみんなで会えるんだろう。何か寂しいよね。美月、これからはこまめに連絡しようね?」



1人の友人がキヨの手を握って名残惜しそうにしていると、もう1人クラスメイトがやって来た。