ある日の夜。

フウを寝かせたキヨは珍しくケンと2人、ソファに座っていた。



「今日、イノリ帰り遅いの?」

「うん。仕事仲間と飲んでくるみたい」

「まぁ付き合いも大切だからね」



イノリの帰りを待っているキヨとケンは、毛布にくるまりながら話していた。




「ケン、カンナとどう?私、最近カンナと話してないなぁ…」

「最近カンナ、家にいないもんね。…俺さ、1つ考えてる事があるんだ」

「何?」

「…ちゃんと決心が固まったら話すよ」



キヨはケンの言葉が気になりながらも、問い詰めるのはやめた。




「そうだキヨ、高校3年の時のクラスの同窓会のメール来た?」

「来た来た。カゼに会えるの楽しみ〜♪って言われたよ」

「…そっか。高校の奴らはカゼの事知らない人いるんだよな」

「みんな…どんな顔するんだろ」



男女共に人気のあったカゼ。

カゼの死を知らない人はどんな反応をするのだろうか。




呆然とする人
泣き崩れる人


そんな人を見ながら、またカゼがいない悲しみを味あわなくてはならないのか…。



そう思いながらキヨはココアを啜ると、マグカップをテーブルに置く。




「あれ、キヨ。その指輪なに?」

「え?これ?ふふっ。イノリが小さい頃、くれた指輪。部屋の整理してたら出てきたの」



キヨの指にはめられているのは子ども用の玩具の指輪。


その指輪は、小指にはめても少しキツい。