翌日。

キヨは母子手帳を持って、フウと共に15週目検診に行っていた。



尿検査や血液検査、体重測定などを行った後、キヨは心音を聴く為にベッドに寝そべっていた。




「あれ?北山さん、お子さんいらしたんですか?」


「この子は友達の息子で、仕事してる友達の代わりに面倒を見てるんです」


「そうだったんですか。大人しくて手の掛からなそうな子ですが、あまり1人で何でも背負い込んだらダメですよ」



医師の言葉にキヨはフッと笑った。




「…いいんです。この子は私の息子でもあるから、フウに寂しい想いをさせないで済むなら私は何でもします」


「そんなに大切なんですか?友達のお子さんなのに?」


「はい。大切な家族が残してくれた子ですからね。何があっても守るって決めたんです」



ベッドに寝そべっているキヨをジッと見つめているフウ。




「北山さんはいいお母さんになりますね。あなたから生まれてくるお子さんは幸せになる」



医師が優しく微笑みキヨのお腹に器具をあてると、ベッドの横にある画面にキヨのお腹の中の映像が映った。


何となく人の形をしている赤ちゃん。



キヨのお腹の中で足を伸ばしたり、縮めたりしながらフヨフヨと動いている。

そして微かに聞こえる心臓の音。



お腹の中に宿った命は、小さいながらに生きている。




「…私、頭痛がしたり眩暈がしたりすると…妊娠してる事が嫌だなって思ったりしてたんです。でも…この子は私しか守ってあげられない。私と一緒に生きてるんですよね」



キヨは映像を見つめながら涙を流す。




「そうわかったのなら、北山さんはもう大丈夫ですよ。あなたはもう立派なお母さんです」




その後、キヨは録画してもらったエコー映像のビデオを持って家に帰宅した。