続・祈りのいらない世界で

「カゼを好きなカンナは、そんなものを求めなくてもカゼを想っていたよ。カゼを好きだという気持ちを感じてるだけで幸せそうだった。

カンナはまだ若いから、今はただ欲求が溜まってるだけだ。それだけなんだよ」


「…違う。違うよ…」


「俺はカンナとフウを養ってやれる。守ってやれる。2人共凄く大切だよ?…でも愛してはやれない。カンナに恋愛感情は持てないよ」



カンナは真剣な表情で話すケンを見ると、涙が込み上げてきた。





何故カゼだけだと想えないんだろう…


寂しいから?

ケンが言うように欲求が溜まっているから?


カゼしか見ていなかった私が、ケンをちゃんと見るようになったから?

ケンの魅力に気付いたから?




あぁ。

あの時キヨが、イノリを好きでもケンを選んだ理由が何となくわかった気がする…





「…カンナ。カンナが俺といて辛いのなら、悩んでしまうのなら俺達は離れた方がいいのかもしれないね」


「……ケンはそれでいいの?私が…地元に帰っても平気なの?キヨの時みたいにっ…引き止めてはくれないの?」


「俺はカンナを傷付けたくない。カンナにはカゼだけを想ってて欲しいんだよ」


「私にはもう…選択肢がないのね。わかったわ」




カンナは涙を拭うとケンに笑みを向けた。

カンナの目は瞼が腫れ、目元は化粧が黒く滲んでいる。



「…っ!!カンナ…俺は…」

「大丈夫。私は強いから。フウさえいてくれれば寂しくなんかないわ」



カンナはそう言うと、部屋から出て行った。