続・祈りのいらない世界で

「まだ時間はある。考えてみてくれないか?」

「…イノリはカンナ達と離れても寂しくないの?」



涙目で訴えかけるキヨを、イノリは優しく抱き締めた。




「寂しくないって言ったら嘘になるな。…でも俺には美月がいる。お前とは5人でいた思い出を共有出来る。寂しくなったら思い出せばいい。
…何処にいたって、俺ら5人は一緒にいるんだってな。だから寂しくない」



そっか。
そうだよね。


私達は何処にいても繋がっている。

カゼとだって離れているなんて思わないもの。




でも…

今すぐ『うん。』と頷ける程、私は強くない。






キヨはイノリの服で涙を拭いながら、イノリに抱き締められていた。






「カンナ、落ち着いた?」



ケンがカンナの部屋に入ると、カンナはカゼの写真を眺めていた。




「…聞いて、カンナ。俺ね」


「カゼは…笑わないよね。写真でもプリクラでも…たまに笑ってるのもあるけど。本当に可愛い…」



カンナはケンの言葉を遮って話すと、顔を合わせないまま写真を見つめていた。





「…なんでかしらね。小さい頃からカゼしか見てなかったのに、カゼだけがあんなに大好きだったのに…いなくなってしまった途端、ケンの事を…。私は最低ね。…カゼ」


「…カンナ。カンナは俺を好きなワケじゃないよ。ただそばにいるから、一応旦那だからそう思っちゃってるだけだ」


「違うわ!だってキスやそれ以上をして欲しいと思うもの!!これを好きって言うんでしょ!?」




カンナが涙目でケンを見上げるとケンは首を振った。