続・祈りのいらない世界で

「私ね、ケンは女々しくて弱くて頼りないと思ってたんだ。


でもあの頃、私とイノリ、カゼ、カンナが道に迷っていた時、ケンだけはいつも前を向いていた。


私達が間違った方へ行かないように、ケンは正しい道へ手を引いてくれた。

寂しい時はいつもそばにいてくれた。



ただそれだけの事だけど、それだけの事をするのは難しいんだよ?


だからケンは女々しくも弱くもない。誰よりもしっかりしていて、優しくて…強いんだよね」




…そう、いつだってケンは前を見ていた。



私達4人が闇の中を歩いていても
先が見えない日々を送っていても


ケンはいつだって冷静に光へと導いてくれた。

寂しさに負けないようにいつもそばにいてくれた。





『俺がイノリを忘れさせてあげるから』

『俺が幸せにしてやるから何も心配するな』

『間違った道を歩むのも大切なんだよ』




いつだって私を責めるでも慰めるでもなく、ただ真っ直ぐにぶつかってきてくれた。



ケンの真っ直ぐさが歩むべき道がわからず、さまよっていたあの頃の私を救ってくれたんだ。




カゼ程の確信をつく言葉ではないけれど、ケンの言葉はいつも純粋な優しさで包み込んでくれる。




ケンは優し過ぎるから弱く見えるけど、本当は誰よりも芯のある強い人だったよね。





「ありがとうキヨ。…今は無理だけど、生まれ変わったら今度は俺と恋しようね」

「生まれ変わっても私はイノリを選ぶよ?」

「酷いよキヨ〜」



暫くふざけ合った後、キヨはリビングへ、ケンはカンナの部屋へ向かった。



キヨはリビングに戻ると、フウを寝かしつけたイノリにカンナとケンの喧嘩の理由を話した。