続・祈りのいらない世界で

「イノリとケンにも連絡を入れておいたから、仕事早退してくるんじゃないかしら」


「えっ!?…やだな。イノリに怒鳴られそう」


「そうね。外出禁止の約束を破ったんだしイノリの事だから、絶対怒るわよ」



キヨが溜め息をつくとカンナは笑った。




「愛されてる証拠じゃない。不器用なイノリなりの愛情表現よ」

「もっと優しい愛情表現がいいよ〜。イノリのはわかりにくい!!」



キヨとカンナが話していると、イノリとケンが病室に駆け込んできた。




「あら、2人で来たの?」

「イノリとは仕事場が近いからね、一緒に車で来たんだよ。…ってかキヨ!!大丈夫なの!?」



ケンはフウとじゃれているキヨに歩み寄った。




「大丈夫だよ。かすり傷だし赤ちゃんも無事だったから。ごめんね、ケン。心配させちゃって」


「本当だよ!キヨは何回俺の心臓を止めれば気が済むの!?キヨが手首切った時みたいに、血の気が引いたじゃんバカ!!……でもよかった。かすり傷程度で済んで」



ケンはキヨを優しく抱き締め、髪を撫でた。





「……どけ、ケン」



ケンがキヨを抱き締めていると、ドスの効いた低い声を出すイノリがケンを押し退けた。




「イノリ…ごめん…なさい…」



一目見ればわかる程、怒りをあらわにしているイノリを見たキヨは、あまりの形相に震えながら謝った。





「……カンナ」

「え?何よ、イノリ」



イノリは血走った目でカンナを見ると、カンナの手首を掴んだ。




「何で美月に外出させた!!何で止めなかった!?お前、それでも美月の親友かよ!?」



イノリはカンナの手首をギリギリと握ると、鋭く睨みつけた。





「…そうね、私のせいだわ。ごめんなさい」




キヨを怒鳴りつけるかと思ったイノリはカンナに怒りをぶつけた。


キヨは慌ててイノリを止める。