続・祈りのいらない世界で

驚いたけど痛くはなかった。




あぁ…

赤ちゃん大丈夫かな。
イノリに外出禁止期間延ばされちゃうな。






頭が真っ白で体に力が入らない。

痛みも感じないから、フワフワしてて生きてる心地がしない。




ただ感じるのは

イノリに会いたいという気持ち。






カゼもあの時
カンナに会いたいと思ったの?








地面に転がったままキヨがそんな事を思っていると、ぶつかった車の運転手である若い女性が駆け寄ってきた。



「大丈夫ですか!?怪我はしてませんか!?痛い所は!?」



運転手の声に我に返ったキヨは、ゆっくりと体を起こした。




「…こちらこそすみません。…痛い所はないんですけど、今妊娠しているんで子どもが心配…」

「妊娠!?病院に行きましょう。何かあったら大変ですし」



運転手はキヨを車に乗せると、病院へと向かった。




車に揺られているキヨが落ち着きを取り戻すと、段々と足が痛み出した。


足を見ると、少し擦りむいただけの膝から血が滲んでいた。




擦りむいただけなのに、いつもより痛く感じる。



それは傷のせいなのか、早まる鼓動のせいなのか。





これだけでこんなに痛いのなら、カゼはどんなに痛かったのだろう…



そう思うとキヨは涙が止まらなかった。