この妊娠がイノリと何の関係もないと知るまで、イノリはずっと罪悪感に縛られていた。



その痛みがどれほどの物なのか知らない私は


イノリが私の為に作る距離を中途半端な優しさだとずっとイノリだけを責めていた。




「…お姉ちゃん、お医者さんと結婚するって言ってたけど、どこで知り合ったの?」



キヨは荷造りをしている華月の手伝いをしながら、華月と話していた。




「美月も知ってる人よ。真後ろの家にいた哲也。去年、医者になったばかりの哲兄よ」


「え?てっちゃん!?お姉ちゃん、いつの間にてっちゃんと…。赤ちゃんもてっちゃんの子ってこと?」


「私の悩みを親身になって聞いてくれたのは哲也だけだった。こんな汚れた私なんかを受け入れてくれたのよ。
…だから哲也のいる東京に行くの。私なんかをちゃんと愛してくれるのは、この世に哲也しかいないわ」



哲也は医師免許を取得後、都内の病院に就職が決まり一人暮らしをしている。



華月はその哲也と結婚する為、家を出ようとしていた。




「お姉ちゃんは汚れてなんかないよ。私は優しくて美人で頭のいいお姉ちゃんが大好きだもん。
お父さんとお母さんも今は結婚に反対してるからお姉ちゃんに冷たくしてるけど、本当は心配なだけだよ?
お姉ちゃんを愛してるから悲しんでるんだよ…」



キヨがそう呟くと、華月はキヨを抱きしめた。




「ごめんなさい…。本当にごめんなさいっ!!美月は…こんなに優しくていい子なのに、私は…」



何故謝られているのかわからないキヨは、ただ啜り泣く華月の背中をさする事しか出来なかった。




それから少しして、華月は荷物と共に清田家から去っていった。