続・祈りのいらない世界で

「祭ちゃん、イノリ帰ってる?」


「おかえり、美月ちゃん。祈なら帰ってきてすぐ出掛けたけど。美月ちゃん一緒じゃなかったの?」


「…うん。最近イノリ、私の事避けてるから」



キヨはイノリの母に苦笑いをすると、イノリを捜しに向かった。



いつも行く河原や田んぼ、公園に行くがイノリはいない。



最後に土手に足を運んだキヨは、辺りが暗くなる土手に背の高い人影を見つけた。




「…イノリ?」



キヨが声を掛けると人影が揺れる。

土手にいたのはイノリだった。




「家に行ってもいないから捜したよ、イノリ」

「…何?」

「何って…。なんで最近私を避けるの?私何かした?何かしたなら謝るから、避けたりしないでよ」



キヨが涙目でイノリを見つめると、イノリはキヨから目を反らした。




「…お前は何もしてないよ。俺は怒ってるワケじゃない」

「じゃあ何で避けるの?」

「俺は…キヨから離れるつもりだ。だから避けてる。いつ俺がお前の前から姿を消しても、戸惑わないように徐々に距離を作ってるだけだ。それがこの俺の優しさなんだよ、わかれ」



イノリの言葉を聞いたキヨは、イノリの頬を叩いた。



華月に叩かれた時と違って、頬ではなく心が痛かった。