続・祈りのいらない世界で

「帰るぞ」


「…うん」



キヨはイノリの制服の裾を掴むとイノリと共に学校から出た。




「ねぇイノリ、いつの間にあんなに喧嘩強くなったの?小さい頃は負けてたくせに」


「知らねー。俺も大人になったってことじゃねぇの?」


「大人かぁ…」




キヨは自転車の荷台に乗りながら空を見上げた。





大人になるって何?

なりたくなくても勝手になってしまうものなの?




いきなり速くなった自分の成長のスピードに、気持ちも頭もついていかない。





「…でももう喧嘩しないでね。あんな恐いイノリ…やだ」

「ならもっとお前がしっかりしろ」

「私のせいなの?」

「誰のせいで喧嘩すると思ってんだよ!!」



キヨはいつの間にか大きくなっていたイノリの背中に額をつけると、ボソッと呟いた。




「ごめんね。…ありがとう、イノリ」





一緒に生きてきた14年間。


イノリにとって私は
ただの幼なじみでしかないけど


あと3年、5年、10年先は何か変わっているかもしれない。




もしかしたら、それ以上先になっちゃうかもしれないけど


イノリの中で私の存在が少しでも変わるなら、ずっと待ってる。





だって私は

イノリを愛しているから…








『好き』と『愛してる』の違いを知った

少し切ない中学生時代。