続・祈りのいらない世界で

「キヨ、俺に好きな奴が出来たかなんて聞くのは愚問だ」

「ぐもん…って何?」

「…馬鹿馬鹿しいってことだよ」



イノリは片肘で体重を支えるとキヨを見つめた。




「俺がお前を見捨てるとでも思った?俺は…俺の代わりにお前を泣きやませられる奴が出来るまで、彼女なんか作らない」


「…それは私はイノリの彼女になれないってこと?」



キヨの言葉にイノリは口をつぐんだ。




「…お前はただの幼なじみだ」

「…っ…!!!!」



キヨが顔をしかめると、イノリはキヨの頭を引き寄せて額にキスを落とした。



イノリが額にキスをしてくれるのは昔から。



でも今のキスは、いつもと違く感じた。



イノリはソッとキヨの頭を自分の胸に引き寄せると、ふんわりキヨを抱きしめた。




「イノリ…。私ね…」




“イノリが好き”






その言葉は、この日を境に口に出来なくなった。




もう…

イノリへの気持ちが“好き”じゃなくなっていたから。



“愛してる”に変わっていたから…。