続・祈りのいらない世界で

「ねぇイノリ、好きな子出来た?」



キヨはイノリと二人乗りをして下校している途中、気になっていた事を聞いてみた。



「…さぁな」

「教えてくれたっていいじゃん!ケチっ!!私とイノリの仲でしょ?」

「お前と俺はただの幼なじみだろ!?仲も何もねぇよ」




“ただの”幼なじみ。



その言葉がキヨの胸に深く突き刺さる。





キヨは無意識の内に自転車の荷台から飛び降りていた。



「は?…おい、何してんだよ!」



イノリが後ろを振り向くと、キヨが地面に転がっていた。




「危ねぇだろーが、バカ」



イノリが自転車を止め、キヨに歩み寄るとキヨは立ち上がって制服の砂を払った。



「…まだ好きな人が部活やってるから、学校戻る」

「もう部活は終わりの時間だろ?下手な嘘をつくな。帰るぞ」



イノリがキヨの腕を掴むと、キヨはその手を振り払う。




「…っ…。まだサッカー部はやってるもん!!」



キヨがイノリを睨むと、イノリもキヨを睨みつけた。




「…あぁそうかよ!!勝手にしろ」

「勝手にするよ!!イノリなんかただの幼なじみだもん。私の恋路を邪魔する権利なんかないっ!!」



キヨはそう言い捨てると、学校へと走って行った。






イノリが好き

イノリが好き




でも、それを伝えてイノリを失うのが恐い。

イノリの隣りにいられなくなるのが恐い。




だから…
伝えられない。