続・祈りのいらない世界で

中学2年生にもなると周りにカップルが増え始め、キヨの不安を掻き立てていた。




「カンナ、私おかしいのかな?」

「へ?何が?」

「…イノリがね、他の女の子といると泣きたくなるんだ。…おかしいよね」



キヨは廊下で他の女子と楽しそうに話すイノリを見つめながら、カンナと教室の窓際で話していた。



中学生時代に生まれた感情、それは嫉妬。



小学生の頃もイノリが他の女の子といるのは嫌だったけど、嫉妬みたいなドロドロした気持ちを抱いたりはしなかった。


ただ、自分のお気に入りが取られたという苛立ちだけ。



でも今は……。




「キヨも大人になってる証拠よ。大丈夫、おかしくなんかないわ」


「この内から込み上げてくる気持ちが大人になってる証拠なら、大人って汚いんだね…」


「そうね。でも、子どもみたいに綺麗なまま大人になれる人間なんていないわ。キヨだけじゃない」




自分以外見ないで欲しい

自分だけのものになって欲しい


他の人の名前を呼ばないで

他の人にその笑顔を見せないで





思えば思う程、欲というものは尽きない。


これが大人になるっていうことなら、大人になんかなりたくない。



きっといつか

この溢れ出す汚れた気持ちで

イノリまで汚してしまう…。





これが思春期を迎えたキヨの気持ちだった。