続・祈りのいらない世界で

「祈は美月の事が好きなのか?」


「…知らねー。てか美月って呼ぶなって言っただろ」


「祈次第かな。俺が美月って呼ぶのをやめるのは」


「何だそれ。…嫌なんだよ、キヨが俺以外の男を見てるのが。俺のものでもねぇのに。それにキヨは…哲兄が好きだし」



イノリの言葉を聞いた哲也は笑った。


笑われたイノリは眉間に皺を寄せると、赤くなって俯いた。




「それは祈の勘違いだよ。美月は俺を兄って目でしか見てない。誰が見たって美月が1番大切に想ってるのは祈だ」


「…俺はキヨに恋愛感情を持って向き合うのが恐い。だから今のままでいたい、今はまだ…」


「焦る事はないよ。まだ中学生なんだから。…ただ美月から離れたりはするなよ。辛い事があっても傷付いても、祈は美月といろ。それが約束出来るならもう美月って呼ばないよ」


「…離れたりしねぇよ。俺が離れらんねぇもん」




イノリの言葉を聞いた哲也は優しく微笑むと、立ち上がった。



「じゃあ俺は帰るから、祈はちゃんと謝ってこいよ。…きよに」



哲也は軽く手を振ると家へと帰っていった。



大人で物腰が柔らかい優しい哲也。

彼がお兄ちゃんに見えたのはイノリもだった。