イノリが呆然とキヨの背中を見つめていると、カゼとカンナ、ケンがやって来た。



「イノリ?どうしたの、ボーっとしちゃって」

「………キヨは?」



カンナとカゼがイノリを見ると、イノリは弱々しく首を振った。




「もしかして今日も哲兄の所?キヨ、最近どうしたのかしら。私達より哲兄とばかりいるけど」

「………大人の男の魅力にやられたのかな」

「カゼはバカ言うな!!俺のキヨ〜…」



騒ぐ3人を見たイノリは、キヨに差し伸べていた手を引っ込めた。







「てっちゃんは大学卒業したら、お医者さんになるんだよね」



その頃キヨは哲也の部屋で、哲也と話し込んでいた。



哲也の部屋は医学の本や参考書、分厚い事典などが本棚に並んでいる。



ゲームだらけのイノリの部屋や楽器だらけのケンの部屋、綺麗に整頓されてはいるが物が少ないカゼの部屋、化粧道具やアイドルのポスターだらけのカンナの部屋、漫画やぬいぐるみだらけのキヨの部屋とは違う風景。




「うん。小さい頃からずっと目指してきた夢だからね」

「てっちゃんは優しいからお医者さんに向いてるよ」

「美月は将来何になりたいの?美月は子ども好きだから保育士とかかな?」



哲也の問いにキヨは赤くなって俯いた。


何故将来の夢の質問で赤くなるのか、と思った哲也は首を傾げる。




「私はね、物心ついた頃からの夢があるの」

「そんなに小さな頃から?何?」

「内緒!だってカゼしか知らないもん」

「俺には言わせたくせに、狡いぞ美月」



哲也はキヨの脇をくすぐる。

2人は笑いながらくすぐりあっていた。