続・祈りのいらない世界で

嬉しい事も悲しい事も、教えてくれるのはいつもイノリ。



キヨがそれを知ってから暫くして、バレンタインデーの前日を迎えた。


バレンタインデーを明日に控えたキヨとカンナは、キヨの家で一緒にチョコを作っていた。




「カゼは質より量よね。ケーキにしようかしら」

「イノリは何かとケチつけるから失敗しないようにしないと」



物心ついてから毎年男3人にチョコを渡すキヨとカンナ。



キヨはイノリに、カンナはカゼに、そしてケンには2人で作るようにしていた。





「ねぇねぇカンナ、こんなのはどうかな?」



キヨはカンナにある提案を持ち掛けた。




「いいわね。バレるかバレないかのスリルが楽しそう」



2人は微笑み合うとチョコ作りに専念した。

愛情をタップリ注いで。






翌日、学校へ行くとカゼの机にチョコの山が置かれていた。


カゼが山に動じる事なく、チョコを食べ始めると教室の隅で女の子が小さく喜びの声をあげる。




「毎年毎年本当に凄いよね、カゼは。カゼそんなに食べたら鼻血出るよ」

「………うん。全部は食べないよ」



そう言いながらも黙々とチョコをたいらげていくカゼ。




「イノリは誰かから貰った?」

「貰ってねぇよ」

「でも絶対渡されるよ?イノリの事だから」

「俺は知らない奴から貰わない。恐くて食えねぇよ」



イノリとケンが話していると、イノリの前にマネージャー達が現れた。

マネージャー達は綺麗な包み紙を持っている。




「祈、はいこれあげる」

「は?何だよ」

「チョコに決まってるじゃない。ちゃんと作ったんだから味わって食べてよね」

「いらねー」



イノリが冷淡な態度で断っているというのに、女の子達は喜んでいる。


俺様的性格の男を好きな女の子にはツボらしい。