続・祈りのいらない世界で

おばちゃんと別れた2人は、暫く呆然とシャッターの前に立ち竦んでいた。



「…イノリ、肉まん食べたい。コンビニに戻ろう?」

「あ?…あぁ」



無表情のキヨが荷台に座ると、イノリはキヨを気にしながら自転車をコンビニへと走らせた。



無言のままコンビニに到着した2人は、肉まんと缶コーヒーを買うと外に出る。



コンビニの駐車場の石段に腰を降ろし、無言のまま肉まんを頬張るキヨをイノリは見つめた。



「おい。何か話せよ」

「……ない…」

「は?何だよ」

「美味しくないっ…」



キヨはそう言うと、ポロポロと涙を流した。





「…仕方ねぇだろ。新しい店が出来れば古い店は潰れる。当たり前のことだ」


「何でそんなに簡単に割り切れちゃうの?…イノリはどうしてそんなにあっさりしてるの?」


「じゃあ聞くけど、お前みたいに泣けば何かが変わるのか?」



キヨはイノリの顔を睨みつけると立ち上がり、そのまま歩き出した。




「お前、俺以上の短気だな。すぐ怒る」

「怒らせるのはイノリでしょ!?」

「あぁそうですか。勝手にしろ」



イノリは1人で帰ろうとするキヨを引き止める事なく、携帯をいじり始めた。






小さい頃からあの商店で


夏になるとアイスを買っては5人で食べながら歩いたり

冬になると中華まんやホットドリンクを買っては、寒さを紛らわせたり…。



あのお店には5人の思い出が詰まっている。

その店が無くなった。







それなのに『仕方ない』で済ませてしまうイノリ。




確かに泣いたって悲しんだって、何も変わらないけど

せめて少しくらい一緒に悲しんで欲しかった。