続・祈りのいらない世界で

季節は早いもので、修学旅行が終わってから長い月日が流れた。


すっかり季節は冬になり、連日降り続く雪が屋根や道路に積もっている。



キヨはベランダの雪を少しかくと、密接しているイノリの部屋の窓を叩いた。


キヨの部屋のベランダとイノリの部屋の窓は1メートルも離れていない。

その為、小さな頃から部屋を行き来していた。



小さい頃は危ないと親に怒られていたが、今のイノリなら余裕で飛び移れる。




「イノリ、高橋商店行こう」



高橋商店とは、キヨ達の家の近くにあるコンビニのようなお店。


小さい頃からよくアイスや駄菓子を買っていた5人の行きつけの店。




窓をゴンゴン叩かれたイノリは、ガラッと勢い良く窓を開けた。



「はぁ!?お前、雪が見えてねぇのか!?」

「見えてるよ。でもね肉まん食べたくなったの」

「雪が止むまで我慢しろ。ガキじゃねぇんだから」

「…じゃあ1人で行ってくる」



キヨはピシャッとベランダの窓を閉めると、コートを羽織りマフラーを巻いた。


すると、ベランダの窓をガンガン叩く音が聞こえた。



ベランダに顔を向けると、ベランダにはコートを羽織ったイノリが立っていた。



「…何?」

「何じゃねぇよ。1人じゃ危ねぇだろ。お前バカだから絶対溝にハマるぞ」



イノリはそう言うと、キヨの手を引いて外へと出た。




外は除雪された雪が、キヨの身長ぐらい積もっている。



「うーん…。寒いね」

「当たり前だ!雪降ってんだぞ」



寒いせいか苛々しているイノリ。

そんなイノリにキヨは雪玉を投げた。




「冷てっ!バカ!!ふざけんな!!」

「すぐ怒る!!怒りんぼ寝癖」

「うるせぇ!!泣き虫チビ」




イノリの言葉に怒ったキヨはその場にしゃがみ込むと、雪だるまを作り始めた。