続・祈りのいらない世界で

「わぁ…綺麗。手を伸ばせば掴めそう」

「地元の方が綺麗じゃね?」

「いいの、何でも!…それよりイノリ、星採って♪あの一番光ってるのがいい」

「はぁ!?バカ言うな!!採れるワケねぇだろ!!それに星は絵に描くような形はしてねぇし、実物は綺麗なもんじゃねぇぞ」

「もう!イノリはロマンチックじゃないなぁ!!気の利いた言葉を1つくらい言えないワケ!?」



キヨにそう言われたイノリは少し考え込むと赤くなって呟いた。




「…『星なんかより、お前の方が綺麗だよ』とかか?」



イノリの台詞にキヨは噴き出す。




「あはははは!!イノリの柄じゃないっ!気持ち悪ーい!!」

「じゃあ言わせんなよ!ロマンチックな事なんて俺に求めるな。カゼにでも頼め」

「…私はカゼじゃトキめけないよ。それよりさ、こんなに沢山の星、どんな願いも叶えてくれそうだね」



キヨが夜空を見つめると、イノリは困ったように微笑んだ。




「お前には星は必要ねぇよ。…俺が叶えてやってんだろ。すぐ星に願うな」



うん、そうだね。


私が星に祈ることはいつもイノリの事だもん。

その祈りを叶えられるのはイノリだけだよね。



でもイノリにも叶えられない願いもある。




それは

イノリが私の彼氏になるということ。


イノリはそれだけは叶えてくれない…




「そろそろ帰るか。いい加減ヤバいな」

「カンナ達、上手く誤魔化してくれたかな?」

「時間が時間だし、ちょっと無理があるな。…怒られる覚悟しとけよ」



2人は急いで宿に帰るが、着いた時間が消灯時間を大幅に過ぎている時間だった為、案の定待ち構えていた先生にとっぷり叱られた。



散々説教された後、キヨが寝息がこだまする部屋に戻ると、カンナだけがまだ起きていた。