続・祈りのいらない世界で

「………カンナ。昨日はごめんね」


「え?なんでカゼが謝るのよ。私が酷い事言ったのに」


「………カンナに酷い事を言わせたのは俺だ。でもカンナといたいと想ったのは本当だよ」



カゼは涙目になるカンナの髪を撫でると、カンナと手を繋いで部屋へと向かった。




その頃、イノリに引きずられているキヨは引っ張られている腕をブンブンと振っていた。



「イノリ、どこ行くの?怒られちゃうよ!?…ってかやだ!離して!!」


「黙れ。騒ぐとその口塞ぐぞ」


「じゃあ騒いでやる!!わーっ離せーっ!!!!ぎゃーっ!!」



イノリは喚くキヨの口に小さな袋を突っ込んだ。




「うぇっ…!!何よいきなり!!」

「詫びだ」



キヨが口から袋を取り出し袋を開くと、中には綺麗な髪飾りが入っていた。


硝子細工が散りばめられた和風のヘアピン。




「…今日は悪かったな。キヨとカンナに逆に気を使わせたみたいで」

「ふふっ。イノリがこれ買ったの?…あははは!!似合わないっ!」

「笑うな!…他にいいもんがなかったんだよ」



イノリは髪飾りをキヨの前髪に留めた。




「似合う?」

「…似合うと思ったから買ったんだろーが。いちいち聞くな」



キヨは赤くなってそっぽを向くイノリに微笑んだ。





カンナが言った通り、私はイノリがいなくても楽しめる。


でも隣りにイノリがいてくれると、もっと生きている事が楽しくなる。



だからそばにいたい。





「…イノリ、帰らないの?いい加減、本当に先生に怒られるよ?」


「どうせ怒られんだからいいだろ、時間なんて」


「それはそうだけどさ、何処に連れて行くつもりよ!?循環バスまで乗って」


「奈良だ。高松塚古墳かキトラ古墳に連れて行ってやる」




イノリが連れて行こうとしている場所は、何故か奈良。


京都に来たのにどうして奈良なのか。