続・祈りのいらない世界で

「………焦らなくても大丈夫なのに。イノリはキヨと行動するつもりでいるから」


「もしかして、カゼ。あんたキヨとイノリに気を使って私だけを誘ったの?」


「………うん。イノリはキヨと2人じゃないと素直にならないからね。明日は2人にしてあげよう?俺とカンナはケンと3人で行動すればいい」



カゼの言葉に胸を刺されたカンナ。


カゼが一目散に自分の所へ来てくれたのは自分の為じゃない。


キヨとイノリの為であり、それ以外何でもない。




キヨがイノリを好きじゃなかったら、他の女の子の誘いに乗っていたのかもしれない。


そう思うとカンナは苛立ちを覚えた。




「…あんた、私を弄んでるの?そんなにキヨが大切ならキヨといれば!?」



息をあげて怒るカンナを見たカゼは首を傾げる。




「………何を怒ってるの?」

「その偽善者な所よ!カゼの鈍感!!カゼなんて大嫌いよっ」

「………どうせ俺は偽善者だよ。兄貴にもよく言われる」



カゼは悲しそうに呟くと、ケンのいる席へと戻っていった。



カンナは謝りたいのに言葉が出て来ず、1人部屋へと帰ってしまった。




その頃、階段へやってきたキヨはイノリが他の女の子と話しているのを見つけた。


キヨは階段の下に隠れて2人の会話に耳を澄ませる。




「ね?いいでしょ。明日一緒に回ろうよ」


「だから、嫌だって何度も言ってんだろ!?腹減ってんだから食堂に行かせろ」


「何よ、清田さんと回るの?」



キヨは女の子の言葉に反応する。

イノリが何て言ってくれるのか期待していると、イノリが口を開いた。




「…別にキヨとは行動しねぇよ。明日は1人でいたいんだ。もういいだろ、じゃあな」



イノリは女の子を置いて階段を降りると、階段の下にキヨがいる事に気がついた。



「キヨ?どうした、食堂行くので迷子になったのか?」



イノリが屈んでキヨの顔を覗くとキヨは涙を流していた。