続・祈りのいらない世界で

「だからお前、写メ撮りたがったのか」


「いつもはお父さんとお母さんが一緒に着てるから、いない今日がイノリと着れるチャンスでしょ?」


「何のチャンスだよ。まぁいいけど」



否定をしないイノリの態度が嬉しくてキヨはイノリに寄り添った。




「キヨの親いないの?また旅行?」

「うん。2人で九州に行ってる」

「本当仲良しだね。…じゃあ今日はみんなでキヨん家で寝ようぜ」



嬉しそうに呟くケンの頭を叩くカンナ。

ケンは頭を押さえて叫んでいる。




「イノリ。今日キヨ、イノリいなくて大変だったんだからね。責任取って一緒にいてあげなさいよ」


「責任って何だよ。…まぁ一緒にいてやるつもりだけどな。どうせキヨも1人じゃ寝れないって駄々こねるだろうし」


「駄々なんかこねないもん!!」


「じゃあ帰るぞ?」


「……やだ」




昼間に比べ、元気になったキヨを見て3人は優しく微笑んでいた。




「可愛いぞ、俺のキヨ」

「ケンのじゃないわ」

「………俺のもの?」

「カゼのでもないわよ」



キヨにとって、イノリがどれほどの存在なのかを知っている3人。




「そろそろ帰ろっか。明日も学校だし」

「………うん。俺、眠い」



キヨとイノリが家に入ろうとすると後ろから3人が叫ぶ。



「キヨ!イノリ!!」



2人が振り向くと、3人は満面の笑みを浮かべながら手を振っていた。




「また明日ね。寝坊しないでよ?」

「………また明日」

「キヨ、子守唄必要になったら5粒のあんこ歌いに行くからね。イノリ!キヨに変な事すんなよ!!」

「………5粒のあんこ。懐かしいね」



再び話に花を咲かせる3人を見てキヨとイノリは笑った。




「お前ら、世間話してるババアみてぇだぞ。近所迷惑だから早く帰れ」

「みんな、また明日ね♪」




『また明日』

その一言で明日も一緒にいられるのだとわかる幸せな言葉。



5人の間で交わされるその言葉が幸せだと、その日イノリにくっついて眠ったキヨは思った。