続・祈りのいらない世界で

暫くすると青いチェックのパジャマを着たイノリが戻ってきた。


乾いていない癖っ毛の髪が無造作な方向にハネていて、ライオンみたいな頭になっているイノリ。



「飯出来たか?」


「出来たよ♪卵焼きに野菜炒め、タコさんウィンナーにあじの開きにみそ汁、あとお母さんが作っていってくれた肉じゃが。豪華でしょ♪」


「バランス悪くね?朝食みてぇだし。お前の母ちゃんが作った肉じゃがだけでよかったんだけど」


「折角作ったんだから文句言わないでよ!!」



キヨは怒りながら食事をテーブルに運ぶ。

イノリはリビングのソファに座るとテレビの電源をつけた。



イノリは気付いていないが、今2人が着ているのはお揃いのパジャマである。


イノリとお揃いのパジャマを着るという、キヨのちょっとした憧れだった。




「お前さ、米がベチョベチョだけど…どんな炊き方したらこんなんなるんだよ!」

「水の分量間違えたかな?」

「高校生にもなって米もロクに炊けない女ってマズくね?お前、嫁に行けねぇぞ」

「…いいの、行かないから。それより食べよう、お腹空いた」



2人はいただきますをした後、キヨの作った得体の知れないご飯を食べた。


リビングにはテレビの音と時計の針の音だけが響く。



「そうだ。ケンがキヨの鞄持って帰っちまったから取りに来いってさ。飯食ったらケンん家行くぞ」


「うん、わかった。…それよりイノリ、写メ撮ろう」


「は?写メ?何でだよ」



イノリの問いに答える事なく、キヨはイノリに寄り添い写メを撮った。




「よし、じゃあケンの家行こう」



写メを撮れたことに満足したキヨは、イノリの手を引いてケンの家に向かった。


家の前でケンの名前を叫ぶと、ケンとカゼとカンナが出て来た。




「キヨ怪我大丈夫?はい、鞄」

「ありがとうケン。カゼとカンナも帰ってたんだね」

「うん。キヨの家行こうと思ったんだけど、邪魔しちゃ悪いかなって思って」

「………イノリとキヨ、お揃いのパジャマ着てて新婚さんみたい」



カゼがそう呟くと、イノリはキヨが写メを撮りたがった理由を知った。