続・祈りのいらない世界で

「ぎゃあああ!!痛ーいっ!!!!いやーっ!!!!」



あまりに大きな叫び声にイノリは携帯を落とした。




「なんだなんだ!?どうした?」

「傷にボディソープが染みるぅぅ!痛いっ!!」

「……………」



イノリはそれくらいであんな声を出すなといった溜め息を吐くと、消毒液と絆創膏を探しにリビングへと向かった。




「イノリーっ。あがるから脱衣所から出て行って」



ひと通り体を洗い終えたキヨが話し掛けるが、返答がない。


不審に思ったキヨは浴室のドアから顔を覗かせた。



「…イノリ?」



キヨはイノリがいない事に気付くとバスタオルを巻きつけ、イノリを探しに向かった。



急いでリビングに入ると、救急箱を漁っているイノリがいた。

キヨはイノリの背中に飛び付く。




「うわっ!!びびったぁ!!何だよ、いきなり」


「イノリがいなくなるのがいけないんだ」


「絆創膏探してやったんだろ。……って、キヨ!お前そんな恰好でうろつくな!!俺だって男なんだって言ってんだろーが!!!!」


「イノリが私を女として見てない事くらい、私にだってわかるから大丈夫だよ。…パジャマ着てくるね」



キヨはそのままスキップをしながら脱衣所へと戻っていった。


そんな後ろ姿にイノリは溜め息をつく。




暫くすると赤いチェックのパジャマを着たキヨがリビングに戻ってきた。



「イノリもウチでお風呂入っていいよ。私その間にご飯作ってるから。イノリ用にお父さんのパジャマも出しといた」

「あぁ、サンキュ。…飯焦がすなよ」

「はいはい。任せときなさいって」



キヨは浴室へ向かうイノリを見届けた後、夕飯を作り始めた。




「…今のイノリと私、新婚さんみたい♪嬉しいな」



キヨはニヤニヤしながら鼻歌を唄い、夕飯を作っていた。