続・祈りのいらない世界で

「バカ言うな!もうガキの頃とは違うんだぞ!?何考えてんだ!!」


「だって今日、お父さんとお母さん出掛けてていないんだもん」


「お前んちの父ちゃんと母ちゃんは本当に仲いいな。よく2人だけで出掛けるもんな」


「仲良しなのはいいけど、子どもをほったらかし過ぎだよ。だからお姉ちゃんがグレちゃったんだ。私、祭ちゃんがお母さんがよかったな」


「俺のお袋は過保護すぎてたまにうぜぇぞ?お前の母ちゃんくらい適度にほっとく親の方が絶対いいって」


「そうかなぁ?」



2人は他愛のない話をしながら歩いていた。




「それよりイノリ、今日の試合どうだったの?」

「…あぁ、負けた。俺、調子出なくてすぐベンチに下げられたし」



キヨはこの言葉を聞いて思った。


イノリも私がいなかったから頑張れなかったのかな、と。



勘違いかもしれないし
自惚れかもしれない。



でも、そうであって欲しいと思った。



「ふふっ。イノリも私がいなきゃダメなんだね」

「は!?そんな事一言も言ってねぇだろ!お前こそ今日俺がいなくて泣いてたろ!!」

「え?何でわかるの!?」

「わかるよ。お前はすぐ泣くからな」



イノリは意地悪く微笑むと、顔を膨らますキヨの頬をつついた。



ふざけながら帰った2人が家に着くと、キヨはイノリの服を引っ張った。




「ねぇイノリ。私がお風呂入ってる間ドアの前にいてくれない?」


「は?やだよ、面倒くせぇ。俺は疲れてんだよ」


「だって1人でお風呂入ってる時に泥棒さんが入ってきたら恐いでしょ?」



キヨにジッと見つめられたイノリは頭をガシガシと掻きむしった。




「お前なぁ、男に風呂立ち会わせたら何されっかわかんねぇぞ?…俺だって男なんだよ。わかってんのか?」

「イノリには何されてもいいから頼むんだもん。他の男の人にこんな事頼まないよ」



キヨはにんまりと笑う。


イノリは赤くなりながら溜め息をついた。