続・祈りのいらない世界で

「…ったく。お前はどこまで可愛いんだよ。やめろ、その可愛さ」

「なんで?」

「俺が困る」



イノリはキヨの頭を撫でると、キヨの手を繋ぎ控え室から出た。



その後5人は並んで家へと帰って行った。

もちろん、キヨはイノリの荷台に乗って…。






「懐かしいなぁ。今日もあの時みたいにイノリ頑張ってるのかな?……勝って欲しいけど、怪我だけはしないで欲しい」



イノリは私がいない所でも頑張っている。



私はイノリがいないと

頑張れないのに
こんなに弱くなるのに…



イノリは平気なんだ。





それは当たり前の事だし、人間は1人で頑張って生きていくもの。


そんなのわかってる。


わかってるけど、自分だけがイノリを必要としている事が寂しい。




「ふっ…ひっ…。イノリ…何でいないのっ。いつも隣りで憎まれ口を叩いてるのに…どうして今日はこんなに静かなのぉ?」



1日会わない事なんて珍しい事じゃない。


だけど、いつもイノリがいる生活を送っているのに隣りにイノリがいない事が辛い。



「イノリっ…」



キヨが屋上の手すりを握り締めながら泣いていると、カンナ達がやって来た。


カンナはキヨを抱きしめる。



「キヨ、それでいいのよ。寂しいなら寂しいで泣いていいの。キヨに我慢は似合わないわ」

「………うん。キヨには俺らがいるしね」

「そうだよ。イノリなんかよりも俺の方が甘えさせてあげられるよ♪」

「ケンじゃ嫌…」



ショックを受けるケンを見たキヨは笑った。

それを見た3人も笑う。




夏の匂いを運んでくる風に包まれながら、4人は笑っていた。