続・祈りのいらない世界で

「キヨ！他の野郎見たらぶっ飛ばすからな!!」



イノリはそれだけ叫ぶとコートの真ん中に駆けていった。




「ふふっ。イノリも言うようになったじゃない」

「………もう少し素直に言えばいいのに」

「イノリにしては素直だったじゃない。毎日あれくらい素直だったらキヨの為になるんだけどね」



カゼとカンナがキヨを見ると、顔を赤らめたキヨはボッとコートを見つめていた。

そんなキヨを見てカゼとカンナは笑う。




「イノリの奴め！カッコつけやがってぇ!!…キヨの目はハートになってるし…。目を覚ましてキヨ！あれはただの寝癖大王だよ!?イノリは王子様じゃないんだよ、ただの俺様だよ〜」



嘆くケンにガクガクと揺さぶられたキヨは我に返る。




「そういや、カゼとカンナは試合の時いつも他校でやるし、平日だから応援行けないし、ケンは文化部だから試合ないし。私はレギュラーじゃないからイノリくらいだね、みんなで応援出来るの」


「そうね。じゃあ力一杯応援しましょうか」



騒いでいた４人は試合に集中することにした。


主審の笛の音と共に試合が始まる。




何故男の人は、スポーツをするといつもに増して輝いて見えるのだろうか。



キヨは面倒くさがりなイノリが真剣な顔をして汗を流す姿に見とれていた。




点を入れたり入れられたりしながら試合は進んでいく。


すると相手チームの選手がイノリ達をすり抜け、ゴールの前で高くジャンプをした。


イノリが追い掛け、カットをしに行くが既に遅し。




「くそっ！キヨ見んじゃねぇ!!」



イノリがキヨを見た瞬間。

相手の選手はダンクシュートを決めた。



イノリの目には生まれて初めて見るダンクに目を奪われているキヨが映った。



そのまま勢いのついた相手校に大差をつけられ、イノリ達は負けてしまった。